『著作全集』と『作品全集』

前回は、ハルムスのテキストの複数のバリアントとその底本に関するお話でしたが、今回はヴヴェジェンスキーのテキストの底本について。

『エリザヴェータ・バーム』には複数のバリアントがあり、それぞれ最も信頼できる底本は同じ本のなかに収録されていました。ヴヴェジェンスキーの場合はこれとは異なり、一つのテキストに対して複数の信頼できる底本が存在します。すなわち、

Полное собрание сочинений. Анн Арбор: Ардис, 1980-1984.

Полное собрание произведений. Москва: “Гилея,” 1993.

この二種類です。いま、これらを便宜的に『著作全集』と『作品全集』と呼んでおきましょう。これらはいずれも二巻本の全集であり、前者の編者はメイラフ、後者の編者はメイラフとエルリです。つまり、ヴヴェジェンスキー作品には、(ほぼ)同じ編者による二種類の全集が存在しているわけです。ここで多くの人は疑問に思うことでしょう、一体何が違うのかと。今回も結論を先に言うと、後者の『作品全集』は、前者の『著作全集』の改訂増補版です。両者を比べると細かい差異は多々あるものの、全体としてみれば、ほぼ同じ本だといってもよいでしょう。

注:エルリは詩人でロシア・アヴァンギャルド研究者 

ちなみに、ヴヴェジェンスキーの初期の詩のなかには、この全集が編まれた当時はまだ見つかっていなかったものがありました。それは、ゲラーシモワ『全部』(モスクワ、2011年)という本に掲載されています。

Герасимова А. Всё / А. Введенский. М., 2011.

(2013・2・26)